『ガンガンJOKER』の創刊号から足掛け4年近く連載が続け、「男の娘」漫画としては異例のヒット作となった『プラナス・ガール』が、今月22日発売のJOKERにて、めでたく完結を迎えました。インタビュー当時最終回を執筆中であった作者の松本トモキ先生に、男の娘の代表的なキャラの1人となった「藍川絆」についての話を中心に、改めて連載を振り返って頂きました!


Q1.おまけ漫画の発言にて、連載前に「男の娘は最近ブームな予感する」と思っていたそうですが、先生が当初想定していた男の娘作品はありましたか?

松本トモキ先生(以下トモキ)当時、ブームの予兆として「この作品が」という訳ではなく、いろいろな作品にサブキャラとして女装キャラが出てくる程度でした。しかしながらその人気は、他のメインキャラよりも高いこともある状態が見受けられていた……と記憶しております。この『メインキャラよりも人気』という部分が、既にブームは始まっているのでは?と思った理由ですね。私自身もこのブームの始まりに強く興味を持った形です。それ以前から女装キャラが出る作品自体は読んでいましたが、取り分け『女装キャラがいるから』という理由で読んでいた訳ではありませんでした。女装キャラ自体は好きでしたが(笑)

Q2.藍川が男の子であることが確定的になるシーンを、意図的に描かれないという演出は、読者をヤキモキさせる秀逸なものでした。連載当初からそのようなコンセプトで作品を作っていくつもりだったのでしょうか?

トモキ正直に言えば、結果的にそうなってしまった、という感じですかね。
1話の読み切りでは、藍川の実際の性別について私と担当さんとで意見が割れていました。私の意見としては『藍川は男であり、精神的に男女どちらなのかをアメで試す』という方向にするつもりでしたが、担当さんには『出来れば最後には、身体的にも女の子で』と言われました。私自身は女装キャラを描きたかったので、どうしても担当さんの案は受け入れがたく、妥協点として実際の性別は明白にしない、という形に落ち着きました。
その後連載化にあたって読み切りの設定をそのまま引き継ぎましたので、作中で性別を明言するのは避け続けていましたが、じわりじわりと『ほぼ男の子で確定』と言えるまでの情報を、担当さんにバレないよう小出しにしていったつもりです(笑)

Q3 誰かに強制されているのではなく自分から女の子の格好をし、なおかつ男に積極的にアプローチ(?)をかける小悪魔的な男の娘というのは、どちらかというと珍しいキャラ造形に思われるのですが、最初から藍川のキャラクター像は固まっていたのでしょうか?

トモキ個人的には『誰かに強制されて女装』というのは、キャラクター性と言うより1つのネタ程度のイメージなので、女装キャラと言うならば藍川のようなキャラクターの方が自分としてはしっくりきますね。お相手が男というのは……まぁ半分は私の趣味というか(笑) 一番「お似合い」に見える組み合わせにしました。そういった感じで、藍川のキャラクター性というのはデザイン共々すぐにまとまりました。

Q4 藍川のキャラクターデザインは、ほとんど女の子のような姿ながら、男性的な要素(たとえば無い胸!)もとりこまなければいけなかったと思うのですが、キャラデザを作る際に意識したことはありますか?

トモキデザインの際に『元気の良さそうな』というイメージを持たせました。これは、『女装しているために女の子らしく振る舞っている』というより、自然体でいてなお可愛い、といった藍川のらしさを出すためです。
しかしながら、『実は男です』という設定は、外見や内面とのギャップがあればあるほどインパクトがあるとは思います。なので素直に考えれば、『女性らしい長い髪』や『女性らしいお淑やかな性格』といったデザインないし設定を多く内包させる方が、容易にキャラクター性の強い女装キャラになる気がしますが、藍川の場合はその辺りをあえて無視しました。藍川は女性になりたくて女装しているという訳ではなく、自分らしく生きていくうちに女装という格好になっていた、といった感じです。意図的な女性らしさを出さないことと、性格をとことんポジティブにしたことで、藍川らしいと言えるキャラクターになったと思います。
それと藍川を描く時に気を付けていることですが、質問にも出ています通り、「胸の無さ」には結構こだわってます(笑) 胸の無さというのは、藍川のデザインにおいて外見に出ている唯一の『女装っぽさ』ですので、かなり気を付けて描いていました。

Q5 槙は、ラブコメの主人公としては相当なハイスペックの持ち主ですが、キャラ設定をこのようにしたのはなぜですか?

トモキ理由はいくつかあります。一部、最終話の演出に関わるので全部は言えませんが……槙のポジションは単に主人公として読者目線であるだけに留まらず、カップリングとしてのキャラクターにしたかったのがあります。
槙と藍川がセットで「プラナス」なんです。『槙が隣にいることで藍川がより魅力的に見える』や『相手が槙だからこそ藍川が幸せに見える』といったように、極論すれば、藍川の可愛さは槙あって成り立つものとも言えるのではないかと。ですのである程度藍川にとって釣り合うくらいのスペックは必要でした。
読み切り1話目ではもう少しマイルドなスペックだったと思いますが、2話目以降は改めて再設定といいますか、作中でハイスペックであると情報を入れました。単行本の表紙で、初めは藍川1人だったのが次第に藍川と槙の2人になっているのは、2人で「プラナス」という印象を強くするためだったりもします。

Q6 2巻から「百合っ子」「近親恋愛」など、「アブノーマルな恋愛もの」としての要素が強まっていきますが、彼ら彼女らの設定は連載を始めるにあたって考えていたキャラクター達なのでしょうか?

トモキ近親恋愛ポジションの笹木野姉弟の設定は既に読み切り2話の段階で決めてありました。当然読み切りだったので、アシスタントさんとの会話で「実は隠し設定で~」と出したくらいでした。まさか連載になるとは思いもしなかったので、その後を描くことになるとは想定外でした(苦笑)
百合キャラポジションの紫苑と佳奈だけでなく、その他の全キャラクターは連載が決まった準備段階の間に全て決めました。連載が進むに合わせて少しずつ登場させていこうと。ただ、3人娘と呼んでいた、のん・あさみ・恵の内、のんだけは連載準備段階の設定になかった百合キャラになっていき、自分でも驚いてます。何故なんでしょうね(笑)


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