現在の漫画界において、「リアルなロボット描写が売りの漫画家は?」と聞かれ、カサハラテツロー先生の名前を挙げる漫画好きは決して少なくないでしょう。『RIDEBACK』『ザッドランナー』などを手がけられたカサハラ先生に、先生の「ロボット観」から「作画観」、そして先生の「創作観」から導き出される「読者」のためでもない、「自分」のためでもない、作品作りの『第三の道』について、じっくりとお聞きしてきました。
また、現在何かと話題の「あの作品」についてのお話も……白熱の3時間ロングインタビューを、余すことなくお伝えします!


ロボットものは「乗り心地感」がすべて?

カサハラ先生といえば、やはりロボットとの結び付きが強いと思います。そこでまず、先生のロボットとの出会いをお聞きしたいのですが。

カサハラ1番初めて出会ったロボットはマジンガーZです。小学生の頃、テレビランドという雑誌にマジンガーZが載っていたのを読み、「すごい!なんだこれ!」とドップリとハマりました。作品にのめりこみすぎて、コクピットに乗った時の景色が心の中で見えていたぐらいです(笑)

どういったところに惹かれたのでしょうか?

カサハラ自分はマジンガーZが、実は恐ろしい乗り物だということに小学生のとき気づいてしまったんです。
マジンガーZの恐ろしさは、顔の側面が壁みたいになっていて、前しか見えないことです。だから、横からの攻撃が見えなくてとても危ない。なら取ってしまえばいいように思いますよね?ただマジンガーZって、横から攻撃を受けると「なに!?」って言って人間みたいに横を向くんです。もし横の壁を取ってしまうと、首を横に向ける理由がなくなってしまう。側面攻撃に強くなっているのに加え、ロボの顔を横に向けさせる動機付けにもなっているあの頭のデザインは、完璧に計算されているなと思って大変感動しておりました。

その視点を小学生の時点で持っているのが驚きです(笑) その後は、年代ごとのロボットものにハマっていく感じなのでしょうか。

カサハラ皆さんそう思われるようなんですけど……マジンガーZの途中から、Zスクランダーというメカを使って空を飛ぶようになるんですね。武器の塊のような重厚感がすごかったのに、「エッ、飛んじゃうの?」という違和感があって。一応Zは最後まで見たんですが、そのあと始まった『グレートマジンガー』では、背中から羽が生えて、最初から普通に空を飛ぶんですよ。それでもう、いったんはロボットアニメはいいかな、と(笑)

リアリティのなさに耐えられない小学生(笑) 先生の年代だと「ガンダム」は、一度は通る道だと思うのですが……

カサハラ良い台詞が盛りだくさんだというのはわかっているので、何回か最初から観ようと思って挑戦するんです。だけど大気圏突入ぐらいまでが限界で、どうしてもその先を観ることができなくて。

その理由とは?

カサハラ自分はとにかく、「乗り心地感」がないと駄目なんです。
なんでガンダムがいまいちピンとこなかったかというと、「アムロ行きます!」みたいな発進シーンがあるじゃないですか。そのとき、ガンダムは前傾していますよね?でもアムロ君は逆に、後ろの方に体を倒しているじゃないですか。操縦者がそういう風になっているということは、足を先に出して発進しているような感じになっていないとおかしいような気がして。要は、今ガンダムがどういう姿勢なのかが、作品を観ていてよくわからないんです。あとガンダムだと、横から攻撃を受けると、パイロットが横を向くじゃないですか。そこにモニターはないんじゃないの?って思っちゃうんですよね。その辺りがどうしても気になって、のめりこめないんです。

では、どのようなロボットものにハマっていたのでしょうか?

カサハラ自分が熱中していたのはイデオンですね。イデオンは100mくらいのロボットに沢山の人が乗っていて、腕の方にも乗っていて銃座があったりするんです。ロボ自体が戦艦みたいになっているんですね。それでリーダー格の主人公が、「右舷、弾幕薄いぞ!」とか「足、キック!」とか指示を飛ばすんです。そうすると足の操縦者が「今やってる!」とか文句まで言ったりする(笑) 「音声でロボ動かしてる。スゲー」と仰天しましたね。

パワードスーツなどの、着る系のロボットはどうですか?

カサハラ最近だと『アバターのアンプスーツとかが好きですね。
手順を踏んで、ちゃんとメカに「乗ってる感」を出しているのが良い。『アバター』のアンプスーツは、物語上まったく意味もなく、あれだけのためにどれだけ金をかけているんだというぐらい色々な手順を踏んで、発進するまでのシーンを描いているんです。好きじゃないとあのシーンは作れないでしょうね。『アバター』を観るときは、アンプスーツを着るシーン以外は全部飛ばして、そのシーンだけディスクが擦り切れるんじゃないかってぐらい何度も観てウットリしています。

「乗りごこち感」という話が出ていましたが、直球で乗り物系はどうですか?

カサハラスターウォーズは、中学の頃に初めて「帝国の逆襲」を観に行ったんですけど、一発で虜になりましたね。スターウォーズの旧3部作は、「次から次へと見たことがない乗り物が出てきて、それに乗る」っていう話じゃないですか。逆に新3部作は、チャンバラばっかりやっていて自分は興味が持てない(笑)
アニメでいうと、『風の谷のナウシカ』ですね。あれも次から次へとウットリする乗り物が出てくるうえに、それぞれの「乗り心地感」が違うんです。
「ナウシカ」では、クシャナの部隊が自陣の城の城壁をぶち破って特攻をしかける、一連のシーンがとにかく好きで、何度読んでも涙が出てしまいます。表現としても、スピード線とか一切描いていないのに、使われている書き文字で、走っている感じを出しているのが物凄くて。あの「スピード感」は、漫画でしか出せないと思います。あの宮崎駿先生も、あのシーンをアニメにするのは骨が折れるだろうなと。集中線を出さずに、スピード感のある漫画を描きたいという気持ちが常にあって、近作の『ザッドランナー』でも意識的に、スピード線を減らしたりしていました。