怪奇!家族からのダメ出し

ここからは製作の内容について伺いたいと思います。普段はどのようにネタ出しをしているのでしょう?

詩原『ナイショの戸黒さん』の場合は生き物、カタツムリを主題にしているので、カタツムリに関する部分は調べるだけでネタがポンポン出てくるんですよ。そういう点ではあまり困っていないですね。東海林(とうかいりん)くんという男子中学生が主人公の作品なんですけど、私は女子高出身で男の子のことをよく知らないので、人に聞いたりインターネットで調べたりしています。

書籍はあまり使わないのでしょうか?

詩原漫画もそうなんですけれど、私は本を読むのがとても遅いんですよ。文字だけの本だと人の倍以上かかってしまうので調べるのには効率が悪くて。カタツムリを調べるのにピンポイントな本もあまり多くないので、もっぱらインターネットで調べています。情報量は本の方が多くて面白いんですけれど……。

『おねいも』の方は詩原先生の地元をモチーフに描いているとお聞きしました。

詩原そうなんですよ!『おねいも』には元々「田舎」と「姉妹」というコンセプトがあるんですけど、田舎というよりも地元アピール、地元紹介に近い漫画になっています。職権乱用ですね。
以前から「東北を舞台にした作品はあるけど、その場所をテーマにした漫画って無いよなー」と思っていて、じゃあ私がやろう!ということで楽しく描いています。実家が山形なんですが、『おねいも』の舞台はその周辺がベースになっていて、担当の方に「もっと田舎感を出して」というようなことを言われると動物を出したりしています。背景の資料にはGoogleのストリートビューを使ったりもします。
ネタという意味では、自分が地元に住んでいた頃に体験したことを季節ごとに思い出したり調べたり、自分の親に聞いたりしています。本編で犬が出てくるシーンがあるんですが、担当の方がアオリに「秋田犬」という単語を入れたんですよ。私は秋田犬のつもりではなかったんですけど、そう書かれてしまったので雑誌を読んだ家族から「あれは秋田犬ではない」とか「秋田犬はもっと顔が丸い」「しっぽが丸まっていない」みたいなツッコミがバンバン飛んできたことがあります(笑)。

ネタが出てこない時は何をしていますか?

詩原基本的には無理矢理ひねり出してるんですが、自分でもまだどうすれば出てくるのかがわかってないんですよね。掃除やら洗濯をしている時にパッと浮かんだりもします。家に居るとどうしても他のことに逃げてしまったりするので、近所の喫茶店に行って「ネタが出るまで頑張ろう!」と意気込んで行ったりもしています。結局何も浮かばずに出てくることも多いんですが……。

作画の環境について教えて下さい。

詩原基本的にはアナログです。ペン入れまでアナログでやって、トーンや仕上げの部分だけはデジタルですね。画材は下書きを青いシャープペンシルで描いて背景がコピックのマルチライナー、ペン入れがGペンです。あまり絵を描き直したくないので、ネームを原稿の大きさにして、それをトレースして同じものを描くという手法で描いています。

製作の中で特に好きな作業や苦手な作業というのはありますか?

詩原私は直線を引くのが大の苦手なんですよ。背景はだいたいフリーハンドで描いているんですが、枠線はまっすぐ引かないといけないので……。同じ理由でウニフラッシュを描くのも苦手です。ほとんど使わないんですが、使うとしてもフリーハンドで描いていますね。
好きな作業はペン入れですね。特にキャラクターを描くのが好きで、早い時は本当に早いです。

ネーム作業はどうですか?

詩原ネームは一人じゃなくて編集者との戦いなのでまた別のベクトルで大変ですね。特に自分が「ここを描きたい!」と思っていたところが駄目になるのが辛いです。『戸黒さん』にヒロインの口からカタツムリが出てくるシーンがありますが、最初は止められたんですけど、もっと上の人に聞いてみたら「これでいいんじゃない?」という返事が返ってきた時は嬉しかったです。

タイトルはどのようにして決めましたか?

詩原『ナイショの戸黒さん』はもともと『シークレットメイト』というタイトルを考えていたのですが、即ボツでした(笑)。
『おねいも』の方は連載のギリギリまで決まりませんでしたね。ずっと田舎の姉妹というテーマだけがありまして、地元の方言で「田舎者」という意味の『ぜんごしょ』というタイトルを提案したんですけども、担当に「わかんない」と一蹴されまして。うちの家族には好評だったんですけど(笑)。
最初は『おねえといもうと』でロゴを作ったりもしたんですけど、これだと長いということで「もう『おねいも』で良くないですか」という提案をしたらそれが最終的に通ってしまった、という感じですね。既に連載前の打ち合わせで略して呼ぶようになっていたし、『あねいも』だとちょっと前のゲームと被ってしまうので(笑)。

ペンネームはどこから生まれたのでしょう?

詩原詩原ヒロというペンネームは中学の頃から使っていて、もう10年以上になりますね。私の本名のイニシャルがSHなんですけど、それをそのまま使おうということで同じイニシャルの「詩原(Shibara)ヒロ(Hiro)」にしました。あとは性別がどちらでも使える名前がいいな、と。
どうして詩原になったのかは覚えてないのですが、本名を間違えられたことがないので「一度でいいから間違えて呼ばれてみたい」ということを考えて読み方もシハラじゃなくてシバラにしたのは覚えています。ウタハラさんと呼ばれたりもしますね(笑)。