大井先生が描く巨大ロボットものの新境地!『起動帝国オービタリア』

「オービタリア」は、前の二作品ともまたテイストの違う、SF巨大ロボットもの作品となっています。大井先生が巨大ロボットものをやろうと思われたきっかけは何ですか?

大井「オービタリア」は、実は「あいこ」の次にやろうとした企画だったんです。「あいこ」の時の編集も面白そうじゃんと乗り気になってくれたので、編集長をきちんと説得するために脚本や世界観、キャラクターをじっくり練っていたんですけど、そうしていたら当の雑誌が、廃刊になっちゃったんですよね……

それは、先生個人ではどうしようもない問題で、企画がとん挫してしまったのですね……

大井自分でも自信のあった企画だったので、このままお蔵入りされるのは勿体ないと思いまして、担当とどこの雑誌に持っていけば良いか相談して、実際に企画を持ち込んだ編集部もありました。そこでは、一話目を手直しすれば載せます、という話だったんですけど、今度は人事異動で編集長が変わってしまって、企画自体がお流れになってしまい(笑)。

またしても作品の外の問題が立ちはだかったと。

大井じゃあどうしようかって途方に暮れたとき、そうだ今なら『おくさん』やってんじゃん、なら同じ少年画報社のアワーズがあるじゃんと気付きまして。それで担当に、「こんな企画があるんだけど、アワーズで描かせてくれない?」と聞いたら「いいっすよ」って軽く言われて(笑)。紆余曲折したわりに、最終的にアワーズではすんなりと決まったという感じです。

「オービタリア」に登場する「蒼の終国」は、一国丸ごとがロボットという、過去最大級の超巨大ロボットになっています。その設定はどのように思いつかれましたか?

大井ガンダム等の巨大ロボットものの評論で、「巨大ロボットとは、少年が社会に立ち向かうための比喩である」とよく言われるんですね。少年が大人の社会にコミットするためにロボットに乗りこむ、それはマジンガーZの時代からのモチーフだ、という批評がある。
そんな中で、もし自分がロボットものをやるとしたら、そういう系統の作品とはまったく違ったものをやりたいな、と思ったんです。

今までのロボットもののフォーマットをなぞるのではなく、新たな方向性を打ち出したいと。

大井そもそも「人が乗り込むロボット」という時点で、SF的には説得力を持たせるのが非常に難しいギミックだから、何らかの比喩として使うしかないというのは感じていました。ではどういったものにするか。自分はロボットの操縦席での出来事が、少年一個人の話だけでなく、国の政治そのもののように見せられないかと考えたんです。
自分は基本的にアナーキストで、政府って要らないんじゃないかと思っているんですが、でもそれをただ単純に、現代を舞台にした物語には出来ないだろうし、ムリヤリやってもうそ臭くなるだろうと。それで、子供達が皆で国を動かすという比喩として、子供がロボットを動かす話にすることにしたんです。

多くのロボットものが、少年が「ひとり」でロボットに乗り社会に立ち向かうものなら、「オービタリア」は「みんな」でロボットに乗り込むのだと。

大井その辺りも、一巻の時点では緊急事態だからみんなで頑張って協力して動かしている状況だけど、これからは「蒼の終国」を、合議制で動かすのか、それとも独裁制で動かすのか、そういった方向に持っていけるかな、と考えていますね。

それは今後の展開にも注目しないといけませんね!
本作品で 一つ気になるポイントとして、画面のトーン処理があります。明らかに他作品とは違う絵作りになっていますよね?

大井「オービタリア」ではパソコンのグレースケールで塗っています。昔だったらグレースケールでは印刷に出なかったんですけど、コンピューターや印刷技術が上がって可能になったので、そういったものを取り込んだ、今の時代の絵作りが出来れば良いなと思いながら描いています。
なぜ「オービタリア」ではそういう方針にしたかというと、連載の企画を練っている初期の時から「ロボットものをやるなら、絵もコンセプトとして新しくないといけない」と考えていたんですね。視覚的に何か新しさが無いといけないよなと。たとえばガンダムにしろエヴァンゲリオンにしろ、そのロボットのデザイン性にみんなびっくりした訳じゃないですか。
ただ僕にはそこまでデザインセンスが無いのは分かっていたから、ロボット本体のデザインで勝負するのは難しい。なら、もっと次の時代の漫画の画面作りみたいなのを提出出来れば良いかなと考えたんですね。企画を立ち上げた時はまだパソコンの技術がこんなに発展する前だったんで、その時は薄墨で描こうとも思っていました。なので、「オービタリア」は技術の恩恵を100%頂いているといえますね。

今回取り上げた三作品以外にも、漫画アクションで『モトカノ☆食堂』、まんがタイムきららフォワードにて『ここが限界のオーバル学園』の原作担当をされるなど、膨大な連載作を抱えております。これだけの連載を並行して描くのに問題はないのでしょうか?

大井正直、今はかなり無理しています(笑)。とはいえ、無理だからといって仕事量を減らしたりすると、今以上手は早くならない訳ですよ。出来ると踏んだ上でちょっとずつ無理をしていくと、またキャパシティが増えるんです。そうしていけば、自ずと問題なく回せるようになると思います。それは、たとえばさっき言っていたような脚本術を完璧にしておけば、話で悩まずに済みます。それに、絵もきちんと勉強をしておけば、いちいち「どうして描けないんだ」と悩まなくて済むし、ネームの切り方も、自分の中にこういうシーンだからコマ割はこうだっていうロジックが出来ていれば、変に頭を使わなくて済む。そういう事を積み重ねておけば、コンスタントに漫画が描けるようになると思いますね。