大井先生の師匠直伝、「連載の取り方」とは!?

大井先生はアシスタントもご経験されたとお聞きしました。その時の苦労話やそこから学んだことなどあれば教えてください。

大井すごく優しい先生だったから、苦労らしい苦労といえば通う場所が遠かったぐらいですね(笑)。先生から学んだ事は沢山あるんですが、ひとつ一生心に残そうと思った事があります。ある時先生が「大井君、どうやったら雑誌で漫画が描けると思う?」って聞いてきたんですね。「いや、わかんねっす」と答えたら、「漫画はね、『コネ』で描くんだよ〜」って言われて。コネ、という言葉を変えれば「人との繋がり」ですね。僕の師匠は『メタルスレイダーグローリー』ってファミコンゲームを作った☆よしみる先生って人なんだけど、そのゲームを作った後に出会った担当さんが先生を買ってくれたから、漫画を載っけてくれるようになった。そういうつながりみたいなので描くんだよと。

師匠の☆よしみる先生も、担当さんと繋がりを持ったことが連載を持つきっかけになったと。

大井これはね、才能がべらぼうにあれば関係ないけど、自分みたいにまったくない奴にとってはものすごく大事な事です(笑)。たとえば、『ちいちゃんのおしながき』(以下「ちいちゃん~」)は、友達の知り合いの編集さんが、友達づてに「ウチでやりませんか?」と言ってきた。今ヤングキングアワーズで『起動帝国オービタリア(以下オービタリア)』を連載しているのも、『おくさん』を同じ少年画報社のヤングキング゙で連載していた事からスタートしました。すべて人の繋がり、いうならば全部コネで描いている訳です(笑)。

なるほど~。しかし学生の身としては、どうやったらその「コネ」が作れるのかが分かりません……

大井月並みですけど、初対面の人でも自分から話しかけられるようなコミュニケーション能力でしょうか。とはいえ僕も元々はそういうのが出来ない人間だったから、出来ない人の気持ちも分かるんですよ。自分から話かけにいって嫌われたりとか、失礼な事言ったらどうしようとか思っちゃうんですよね。
でもある時、そういった失敗は全然大した事ないんだって気付いたんです。たとえば、自分はライトノベル作家・脚本家のあかほりさとる先生にすごくお世話になっているんですけど、あかほり先生と知り合ったのは、たまたま出版社の飲み会みたいなのでお会いしたのが最初でした。「売れてる人だ、あの人と喋らせてよ!」と編集に頼みこんで取り合ってもらって(笑)、あかほり先生って気さくな方だからすごく話しやすくて、どうやったら売れるのかっていうのをガツガツ聞きまくって―おそらくその時相当失礼な事も言っていた気がするんですが(笑)―それ以降すごく気にかけて頂けるようになったんです。

失敗を恐れず、というかどんどん失敗するべきなんですね。

大井そうそう!特に若い頃にどんどん失敗しといた方が一番良いんですよね。とはいえ、若い頃には分からないのも分かっちゃう。自分の身に起きた時に初めて分かる(笑)。
それでも僕達が言っちゃうのは、自分の中で「気付くのが遅かったな」という後悔があるからなんですよね。自分もおっさんになって初めて分かりましたね……

そういえば、以前インタビューした漫画家さんの中に「漫画家に必要な能力の八割はコミュニケーション力」と仰っていた漫画家さんもいらっしゃいました。

大井売れている人は、皆高い気がしますね。それこそあかほり先生はすごく喋りが立つし、あと「カイジ」の福本伸行先生と一度お会いした事があるけど、ものすごく喋りが上手くて話していてとても楽しかった。だから売れるには多分、「ここ」だなと(笑)。僕も元々は本当にコミュ障なので、これでも大分人と喋るようになったんです。

こうやって直接お話していると、そうだったとはまったく思えません……(文字では伝えらないのが残念!) それでは時系列がちょっと戻ってしまうのですが、連載デビューを果たされた時の経緯など教えて頂きたいのですが。

大井大学に居る間までに連載が始まれば良いな〜、とかちゃらんぽらんに考えていたんだけど、連載無いまま卒業しちゃって……これは変にこだわっている場合じゃないということで、編集さんに「どうしたら連載取れる?」と直球で聞いて(笑)。そうしたら「とりあえず女の子がメインの漫画でないと、ウチでは載っからないな」と。自分は一般的な女の子が苦手というか、『おくさん』みたいな熟女にしか興味無かったんで(笑)、女子高生とか描けねえよと悩んでいました。

なるほど(笑)。しかしデビュー作の『あいこでしょ! ―ひまわり幼稚園物語』「以下「あいこ」」は熟女とは程遠く、タイトルにある通り幼稚園が舞台の漫画です。どうしてそのような舞台を思いつかれたのでしょうか?

大井連載案でうんうんと悩んでいた時に、ある日ぼんやりテレビを観ていたら幼稚園が舞台のコントをやっていたんですね。それを見て「あ、幼稚園児だったら描けるかもな」と閃いたんです。幼児なら、女の子というよりもむしろ犬や猫のキャラみたいな扱いで描けるんじゃないかと(笑)。それで、幼稚園の女の子が出てくる漫画を描くって編集に伝えたら、「良いね、じゃあその幼稚園の子と主人公が恋愛する話にしよう」って言われて……「恋愛?四歳なのに!?」って話ですよ(笑)。いったいどうやって恋愛になるんだと編集に聞いたら「それは君が考えるんだよ」と言われて(笑)。
頭を捻ってどうにか連載案を作って担当に渡したら、次の日ぐらいに「あれ会議通ったんで連載ね」と電話が掛かってきました。おそらく担当が、そろそろ僕をデビューさせようと頑張って頂けたと思うんですけど、漫画は十年ぐらい描いてきた中であんな短さで連載が決まったことは無い(笑)。それが連載デビュー作の「あいこ」ですね。

連載を取るまでは相当時間がかかりながらも、通る時はすんなり通ってしまった訳ですね(笑)。