2章:別ジャンルへの挑戦

それでは次に、吉川先生の漫画制作についてお聞きします。ストーリーは具体的にどう考えていますか?

吉川まず、起承転結4分割して考えて、それに沿ったキャラクターを考えます。あと、私の場合は、いきなり描き始めずに、頭の中にふわふわした状態のストーリーを置いといて、雑誌に載っている自分の漫画をイメージできるくらいまで置いておきます。そうすると、描き始めると描けることがあるという……。イメージした通りの漫画が描けた時はとても楽しいです!文章にしちゃうとそれだけしか思い出せなくなっちゃうので、ネタ帳とかはあんまり作らないです。

記憶力がいいですね!猫のネタを逐一メモしているのかと思っていました。

吉川猫を4匹も飼っているので、猫漫画のネタは周りにあふれかえっています(笑)。取材先でお話いただいたことはメモするんですが、最終的には自分の記憶頼りです。メモをとるのに集中してしまうと面白いことを聞きそびれてしまう気がして……。読者のオタク事情を描いた『オタリーナのオタ的恋愛事情 恋だか萌だかわからない。』(以下『オタ的恋愛事情』)でも、ネタを書き留めたりとか、最初から全部の出来事に向き合ったりしたら、おもしろかった部分が分からなくなってしまったのではないかと思います。ストーリーだけでなく、絵の面でも、『アニマル部!〜葉桜中学アニマル部〜』(以下『ア部!』)では、描く動物のスケッチをしてから、何も見ないで原稿を描いています。スケッチして覚えた動物の一番かわいい部分が描けていたらいいなと。でも、背景は資料を参考にして描いていますよ。

では、プロットはどのように作っていますか?

吉川B4の紙を8等分にして描いています。久保ミツロウ先生の『3.3.7ビョーシ!!』の1巻か2巻にあった、おまけページにこの方法が描いてあって、それを見て以来ずっとです。そしてここら辺で、担当さんと打ち合わせをします。ここが一番の山場ですね!後ろ半分ごっそり直しとかあります。

厳しいですね……!

吉川でも、最初にプロットやネームを見てくれる人が楽しんでくれないと先に進めないですからね。的確な指示をいただける担当さんは、大切な存在です。私の場合は、出版社ごとに担当さんが違うんですが、いろんな人と話ができるほうが、多くの見方が勉強できていいですね。ひとりで描いていると、視点がひとつですよね。だから、担当さんに見てもらうと「あれ?ここ、こうじゃない?」と指摘されて「ああ!ここつじつまが合わない!」となったりします。

背景はどう描いていますか?

吉川登場人物がどこにいるかわかるようには最低限していますが、最近は、背景を描くのが楽しくなってきたので、増やそうと思っています。その時々で違いますね。『踊る産科女医』では、掲載雑誌が『女性セブン』(小学館)だったこともあって、華やかでかわいい感じにしたかったので、背景は柄トーンを増やしました。『子どもと十字架天正遣欧少年使節』(以下『子どもと十字架』)『葬式探偵モズ』の時は、逆に背景を描きこんだり、ベタ塗ったり。そのお話に合わせた仕上げ方をするのが好きです。

コマ割りはどう決めていますか?

吉川コマ割りは苦手なので、3段に別けるベーシックなコマ割りが多いですね。少女漫画で表情がよくわかるようなコマ割りしていたり、少年漫画のアクションシーンで迫力が出るようにコマ割りしたりしているのを見ると、すごいなあと感心します。私は、担当さんに毎回「このページの見せコマをもっと意識して描きましょう」とか言われ続けているので……。そう言われる度に「ああ、なるほど。」と納得するのですが、なかなかひとりではできないです。

タイトルはどう決めていますか?

吉川毎回いっぱい案を出します。担当さんと、あれでもないこれでもないと言っているうちに「あ!これだ!」となるのが1個あるんですね。それを探す旅みたいになります。どんな漫画なのかタイトルを見てわかるように決めなければいけないのはわかっているんですが、時間がかかりますね。

現在、吉川先生は複数連載を抱えていますが、どうスケジュールを組んでいるのでしょうか?

吉川両手に荷物を抱えてのハードル走みたいなものですね。荷物が平行して行っている作業で、締め切りがハードルみたいな……。バタバタとハードルを倒してしまうのですが(笑)。

事実に基づいた話を漫画化するにあたって気をつけていることはありますか?

吉川もともとファンが多い歴史を元にした『子どもと十字架』は、大きくイメージを壊さないように気をつけて描きました。エッセイ漫画では、ツッコミの台詞がきつい言葉遣いにならないように気をつけています。

吉川先生の漫画には聞き描き漫画という珍しいスタイルをとっている漫画がありますよね。この経験は今どういきていますか?

吉川人に会って話を聞き、それを漫画にするという経験は、他の漫画にはない楽しさがありました。キャラクターが自分の子どもみたいだ、という漫画家さんがよくいらっしゃいますが、私の場合は、インタビュー相手みたいな感覚です。『片桐くん〜』の登場人物はどこかで生活していて、インタビューをさせてもらって漫画化しいている、というぐらいの距離感です。それは、聞き描き漫画を描いていたからだと思います。

なぜ、様々なジャンルの漫画を描こうと思いましたか?

吉川私、飽きっぽいんですよ。いろいろ描いてみたくて。だから「作者買い」できないってよく言われます。私の漫画を読んで面白いと思ってくださって、私の他の漫画を買っていただいても、全く別のジャンルになっちゃうんですよね……。