『週刊ヤングマガジン』にて全3話読み切りを2回掲載し、人気のあまり連載となった『ヤンキー塾へ行く』の作者、荒木光先生。現在、『塾生☆碇石くん』と改題し連載中であるが、そこにあふれるリアリティへのこだわりや、キャラクターモデルの存在、そして、気になる改題の理由について等々をお聞きした。


初めて単行本を買ったのはいつですか?

荒木先生(以下荒木)小学校4年生くらいのときに『ダイの大冒険』8巻くらいを買いました。

担当さん(以下担当)こどもは途中から買いますよね。

荒木そうなんですよね。僕はアニメからその作品が好きになって、アニメの続きから読みたかったので、8巻から買ったんです。

そのときから漫画家になりたいと思っていましたか?

荒木小学校のときは何も考えてなかったなあ……。高校生のとき親が漫画塾を見つけて、何もしていなかった僕に入ってみたらと薦められて、入れてくれるなら入ろうかと。

担当ジャニーズみたいですね。

荒木そうですね(笑)。高校に通いながら塾に通わせてもらっていました。いろいろ気遣ってくれた親には感謝しています。

ご両親は荒木先生が漫画を描くことが好きだとご存知だったのですね。

荒木そうですね。息子がぐれて、父親をボコボコにしたり、友達とクラブに遊びに行ったりする国民的アニメのパロディ漫画を描いていたのを親が見ていたんです(笑)。

担当それで、息子は漫画家の才能があると思われたんでしょうね(笑)。

荒木だから、漫画塾に入ったときは目的がしっかりあるわけではありませんでした。でも、そこで自分の小学生時代を思い出して描いた1作目の『豚の遠吠え』で賞をいただいたので、漫画家になろう、これでいこうと思いました。

そして2007年に漫画家デビューし、その後2010年に『公衆トイレの中』にて第61回ちばてつや賞佳作を受賞しましたが、どのような経緯で受賞されましたか?

荒木前の雑誌の担当さんとネームを作り、オッケーをもらったので描き始めました。36ページあったので描くのにとても時間がかかりました。やっと完成して持っていったら、「思っていたのと違うね。描き直す?」と言われてしまって……。当時、まだ視野が狭い高校生だったんで、この人についていかないとこういうこともあるよなと思って、その作品は一度押し入れにしまいました……。

担当それが2年後、ちばてつや賞を受賞し、『週刊ヤングマガジン』に掲載されました。読者アンケートの結果が良くて、19歳にして期待の新人だと言われていましたね。

連載デビューするまでに漫画家という仕事を続けられた支えは何ですか?

荒木バイトをしながら漫画を描いていた時期は、バイトが苦手だったので、早く漫画家になりたいという思いでしたが、賞を頂いてからは自信がついたことが支えになったのだと思います。

担当成功体験が積み重なると、モチベーションに繋がりますよね。

そして、『ヤンキー塾へ行く』が全3話読み切りで掲載されました。なぜヤンキー漫画にしたのでしょうか?

荒木とりあえずまずは連載会議に通りたいと模索し、『週刊ヤングマガジン』で通りやすいものはヤンキーとヤグザと車とエロだと……。このなかで一番描けそうなのは、ヤンキーだと思い『ヤンキー塾へ行く』を描きました。実はそれまでヤンキー漫画を全然読んだことがなかったので、とあるヤンキーアクションVシネマのおもしろさを参考にさせていただいて、話を考えさせていただきました。

担当あのときは、模索しては描いての繰り返しでした。連載会議で落ちましたけど、1回オナニーするとタイムスリップする能力を持った男の子の話がありまして(笑)。女の子のピンチを助けるために目の前でオナニーをしてタイムスリップするんですよ。そのことを自分だけ覚えているんで、心にダメージを受けつつまた助けに行くんです(笑)。

荒木今聞くと連載会議を通るわけがない話ですね(笑)。高校生のときの担当さんをモデルにした『恋するゴブリン』という漫画を描いたら、連載会議で主人公が不愉快すぎると言われて(笑)。

担当その連載会議に出ていたんですけど、主人公は僕がモデルなんですよと言う前に「主人公ひどいですね。応援できないですね。」と言われました(笑)。

『ヤンキー塾へ行く』の全3話読み切りが2回続いてどう思いましたか?

荒木いやーうれしかったです……!

このまま連載いけるのでは……と?

荒木あ、ちょっと思ってました……(笑)。最初、主人公である碇石くんのキャラクターデザインができたときに、いいのができたなと思ったので、これを生かして漫画を描くことにしたんです。主人公の顔ができた時点で、いける!と思いました。

担当最初、碇石はくそ野郎でしたよね。

荒木そうですね。けっこうへたれキャラですね。

担当「あんた塾行きなさいよ」とお母さんに言われたら「うっせえクソババア」と言ったり、怒って塾の先生の車を壊したりしていましたね。こんな主人公は愛せないという声が集まり、逆にいいヤツにしたのが上手くはまりましたね。

荒木めっちゃいいヤツですよね。

担当こんないいヤツなかなかいないですよね。最初に荒木先生が、ただのくそ野郎を描いたからこそ今の碇石がいるんです。

荒木僕がくそ野郎なんで(笑)。

担当だから、他のくそ野郎キャラクターの描写上手なんですよね(笑)。

荒木担当さんもくそ野郎なんで(笑)。

担当(笑)。荒木先生は自分ではくそ野郎と言っていますけど、碇石に似たいいヤツな部分があるので、碇石が描けるんだと思います。

『ヤンキー塾へ行く』が週刊連載になった経緯をおしえてください。

担当全3話読み切りが2回続いたとき、「また碇石に会えることを楽しみにしています」というファンレターがあったり、アンケート結果も良く人気だったので、舞台を中学から高校にして週刊連載することになりました。どんなストーリーにするか打ち合わせしていたところ、「尊敬していた先輩が、高校でいじめられているのはどうでしょうか」と荒木先生からが提案があり、室田先輩というキャラクターが生まれたんですよ。

『ヤンキー塾へ行く』のテーマはあるのでしょうか? 

荒木高校1年生にして完成された人間である碇石とふれあうことで、世間的に底辺とされている人達が変わっていき、碇石も変わっていく。そのようなテーマがあります。碇石の周りにいる人達は全員変わろうとしている人達なんです。

結末を考えてから連載開始しましたか?

荒木『ヤンキー塾へ行く』は、毎週行き当たりばったりで、先のことあんまり考えてなかったですね。ヤンキー編の『ヤンキー塾へ行く』を改題し、現在連載中の塾編『塾生☆碇石くん』ではちょっとゴールを決めています。

なぜ改題して『塾生☆碇石くん』を連載開始したのでしょうか?

担当主人公の碇石とヒロインの比呂奈の重要な基盤の物語をしっかり描きたかったんですが、次から次へと別のおもしろい展開が浮かんでしまい、タイミングを逃してしまったので、丁寧に描いていくために連載開始しました。また、幅広い支持を得て単行本をメガヒットさようと、多くの『ヤンキー塾へ行く』ファンのうち、割合の少ない女性や子どものファンを増やすためでもありましたね

なぜ碇石くんの腹話術人形ブライアンくんを登場させたのでしょうか?

担当碇石があまりしゃべらないキャラクターであることを絶対に崩したくないけれど、しゃべらなければ碇石を中心に話を進めることができないので、どうしようかと話し合っていたら、荒木先生が「かわいいクマのぬいぐるみを腹話術でしゃべらせたらいいんじゃないですか。」と提案したんです。

荒木そのときは、すっごく軽い気持ちで言ったんですけど、今では漫画の中核になっていますね(笑)。

担当『ヤンキー塾へ行く』は終わったのではなく、5巻に向けての連載を考えています。1巻に出てきた奈津美、乱太朗くんはどうなっているのか、高校2年生になった碇石達を見てもらいたいですね。『塾生☆碇石くん』で手に入れた技術を生かすことになるので楽しみですね。

荒木できればいいんですけどね……。

担当皆さんが単行本買ってくれればその願いが叶います……!

荒木皆さんお願いします……(笑)!


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