アナログとデジタル、制作における違いとは?

最初に制作にまつわる全体的なお話からお聞きし、次に短編集について具体的にお聞きしていきます。
まず、ネームはどのような流れで作っているのでしょうか。

エナガ 最初は、どういうあらすじにするか、どういうコンセプト・テーマにするかなどを、作品の企画書みたいな形で書き、あとはそれぞれ何ページくらいで構成していくかを考えて、そこからいざネームみたいな感じですね。小さい付箋をネームのページに必要分貼り付けて、このページを見開きで描くとか、ここまでは起承転結のこの部分とかを書き付けて、その中で描くようにしています。

アイディアを出す時はどんな方法を取っているのでしょうか。

エナガ 絵から考えますね。自分で描いて、この世界はこういうものなんだなというのが、描いているうちに段々イメージが浮かんでくるんです。キャラクターの場合は特にそうですね。名前とかを決める時も、キャラクターの顔を描いていると、「こいつはこういう名前やな」と、ふと浮かんでくるんです。逆にキャラクターを見て、名前どうしようかなと考えていると、そのキャラクターはダメになることが多いんですよね、不思議と(笑)

以前ツイッターで、「ネームは初稿から、自分の手で1回修正してから担当さんに見せる」という旨の発言をされていました。

エナガ 自分がろくにネームの欠点を理解していないと、編集さんにアドバイスされても、どれが聞き流すもので、どれが認めるべきものかという判断が出来ないんですね。そうなってしまうと、作品の良かった所も思いっきり修正してしまって、作品が空中分解する恐れがあるんですよ。そこで、ここは絶対直さないという所を決めるために、自分だけのネーム修正をやっています。

漫画の場合、1コマ、1ページズレるだけで構成がガラリと変わってしまう難しさがあると思います。どのように修正作業を行なっているのでしょうか?

エナガ 今はB4の紙に、見開き単位で描いていきます。もし直す所があり、コマや配置を入れ替える場合は、必要なコマを切ってしまって新しい紙にホチキスで 留めるようにしています。ページを変える場合は、基本見せ場の見開きのページがそのままであれば良いので、他の1ページを直したら残りを削ったり、あるいは新しくページを追加して、右ページは右にという元の配置になるよう調整します。

ネームにしたあとの作業行程は?

エナガ ネームを拡大したものをトレス台に載せて、下書きを起こします。これが1番早いですね。それにネームの時に描いた表情が、実は1番良いというのもあるんです。コマの割合とかも、描いている時は全然意識していなかったのに、原稿に起こそうとすると、それが1番フィットしていることが多々あります。

短編集を一通り見ると、1話ごとに絵柄であったり、処理の仕方を変えていることに気付きます。それはやってみたかったことなのでしょうか?

エナガ とにかく雰囲気を重視して、それに合わせて絵柄を変えていました。ただなにより、仕事としてやりやすいように変えていく必要があったというのが1番ですね。アシスタントさんを使う様になったとき、彼らに自然に頼めるようソフトを変えたり等の試行錯誤をしていました。1回作るごとに反省点が山程出てくるので、それに合わせて道具も変えていきした。

絵に関して細かいところで言うと、登場するキャラの全員が大口を開けて、感情を目一杯吐露するのが印象的なのと、全てのキャラクターの全てのコマで、頬に朱を差しているところに並々ならぬこだわりを感じるのですが。

エナガ とにかく、キャラクターの感情を出すためには、普通の大きさでは表現出来なくて。出したい出したいと思ってやっていると、自然とあの口の形になってしまう。最近は、クドく見えてしまうかなと思いまして、少し小さめにしています。紅潮については、頬の斜線は、あれを描かないと落ち着かないんです(笑) 頬に空間があると、どうしても描かずにはいられないというか。そっちの方がカワイイなら描かざるを得ない。絶対描いた方が良いと考えてやっています。

現在はアナログ、デジタルのどちらを使っているのでしょうか?

エナガ 昔は完全デジタルでしたが、今は線画がアナログですね。後の処理はデジタルです。

先生が感じる、アナログとデジタル、それぞれの利点を教えて頂きたいのですが。

エナガ デジタルでいうと、ウェブで発表する時に1番楽ということ、なによりやり直しがしやすいことですね。トーンとかも、アナログだったら濃いトーンを薄いものに貼り替えるのは大変なんですけど、デジタルの場合は簡単に置きかえられます。ブラシの形を変えることで、簡単に雲の形を描けたりもします。
アナログの方は、完成が予想しやすい。例えば、デジタルで線画を描いていると、これで良いかなと思っていても印刷すると全然違うということがよくあったんです。だけどアナログで描いていると、調整は必要ですが大体はそのままのものが印刷で出てきます。

ウェブではデジタルが有利のようですが、雑誌などの紙媒体だとまだまだアナログの方が一日の長があるのでしょうか?

エナガ そうですね、解像度などの問題もあるんですけど、モニターで見る限りはごまかしが効きやすい。ですけど、印刷に載せてみるとアラが出てしまう場合がありますね。
デジタルの場合だと、この色で丁度良いと思っていても、ずっと濃くなってしまうことが良くあるんです。なので数値が基準になりますね。10・20%という数字を基準にして、トーンを貼っていくという形です。この数値なら人の肌に使える濃さになるから、みたいな。そこを間違えると大変ですね。あと雑誌に載る時には少し濃くなります。印刷方法が違うので、線が若干太くなったり、トーンが少し濃くなったりする。単行本の時は大体想定通りです。

作業効率を上げるためにやっていることはありますか?

エナガ デジタルでやっている場合は、搭載している機能を上手く使ってソフトのパフォーマンスを最大にするのが重要ですね。例えばコミスタの場合は、そのキャラクターに必要なトーンを、あらかじめ参照出来るライブラリーみたいなのがあって、その中から選択出来るツールがあるんですよ。つい先月に終えた『HUNDRED』の3話目で、それが使えるようになったので、凄くトーンが早くなったというのがありますね。やはり、使い方次第でどこまでも使いやすくなるのが、デジタルの良い所ですね。
作画面は描くごとに、ここは描き込まない方が良いなとか、ここはベタを使った方が良いな、というのをずっと試行錯誤していますね。どの作品にしたって、必要な線の量があって、それを超えすぎても、無さすぎてもダメなんで。線の量を決めるのは絵柄とか作品のコンセプトですね。そこをきちんと感覚で掴めるかどうかが大事です。

ちなみにデジタルでこんな機能があったら良いなというのはありますか?

エナガ トーンの削りとかはまだまだアナログの感じを再現出来ないですね。それを再現出来るツールがあればと、常に思っています。

デジタルに関しては、創作者と技術者の間でより情報交換が進めば良いですね。