全ての転機―『ZELBESTY』―

『ZELBESTY』は先生が卒業制作としてお描きになられた作品です(現在も先生のサイトにて閲覧可能)。卒業制作であれほどの大作を描くことを決断したのは何故ですか?

エナガ 昨年の卒業制作を見て、スケールの大きいものを描きたいなと考えていました。そこで単行本6冊にまとめて、ページ量も膨大にして一丁やってみようかなというイメージが浮かんで、そこから中身をどういう風にするか考えていきました。

更新履歴を拝見すると、1ヶ月に60ページ近く上げている時もあり、完全に商業での連載並だなと驚いたのですが。

エナガ 死ぬ程大変でしたね(笑) 目標のページ数が先にあって、達成するために1日3ページというペースでやっていました。ページ数に関しては完全に自己目標です。
商業も含めて、『ZELBESTY』の頃が1番キツかったです。まったく給料無しでやる訳じゃないですか。そうすると、どこまでやって良いのか、ラインを引けないんです。無償の仕事だと限度が無い。後ろに引けないような所があって苦しい。だから、プロでやっている方が精神的にはむしろ楽です。

先ほど、卒業制作の中で画力が向上したと仰っていたのですが、具体的には1話と最新話でどのような違いがあるのでしょうか?

エナガまず、描き方の順序が整ってきたことです。描き始める時に、あらかじめレイヤーの構成が詰まったファイルから始めていくんですけど、そのレイヤーは、回を追うごとに増えていきました。完成原稿のイメージも明確に見えてくるようになりました。

作品として大事にしていたのはどのような点ですか?

エナガ 『ZELBESTY』の時にこだわったのは「スケール感」を出すことを重視していました。漫画って四隅に空白があるじゃないですか。『ZELBESTY』の場合は、上の方に長めに空白をとっているんですよ。そうすると、不思議と自然にスケールがデカく見えるんです。ほかに気をつけたのは、最近の少年漫画って四隅全部ブチ抜きの、断ち切りゴマを多用している作品が多いんですけど、『ZELBESTY』の場合は見せ場でない場合は四隅をキチンととるようにしました。こういう風にすれば、むしろブチ抜いた時に迫力が出るので。

絵に関してスケール感を出すために意識したポイントってありますか?

エナガ納得いくまで描きこむということですね。『ZELBESTY』では、トーンを2段階描いているんですよ。例えば、グレーの上に乗算で陰のトーンを作っています。その上から薄くエアブラシで、最近のアニメみたいな照明効果を取り入れたりもしました。

卒業制作に全力を注いでいる傍ら、将来設計をどのように組んでいましたか?

エナガ 漫画家になるのを決めたのは大学3年の10月くらいですね。かなり遅めの方で、それまでは就職するかどうするかでかなり考えてた時期はありました。
ただ4年の時点では、漫画家になることは既に決まっていましたし、後はどうやってプロになっていくかということだけでした。自分の場合は『ZELBESTY』の3巻までの原稿が出来た時点でコミティアに持っていったのが4年の11月でした。それを今の編集さんに見ていただき、お声がかかり『スーパーダッシュ&ゴー!』を紹介してもらいました。

その中から、現在執筆されている雑誌ですね。そこでデビューするのを決められた理由は何でしょう?

エナガ 長期間、短編を掲載させて頂けるとのことだからでした。『ZELBESTY』を描いている時点で、ストーリー作りが全然ダメという欠点に気付いていたので、勉強のためにも1年くらい短編を描きたかったんです。あとは、始まったばかりの雑誌ということで雑誌のカラーがまだなく、描くものの制限が少なかったというのもあります。

ちなみに、もしコミティアで声が掛からなかった場合には、持ち込みや投稿をすることは頭にあったのでしょうか?

 エナガ もちろん考えていました。自分の中で、スカウトされてデビューしたいという欲とか、イメージを持っていた訳ではなくて、デビュー出来るならどちらでも良かったんです。なので集英社さんにお声を掛けて頂いたのは、本当に運が良かったと思います。

ちなみに『ZELBESTY』は現在未完の状態ですが、今後続きを執筆される予定はあるのでしょうか?

エナガ 追い追い描いていきたいと考えています。とにかく今までの連載で培ったノウハウを活かして、『ゼルベスティ』に反映させようと考えています。今はプロットの作り直しをしています。

現在、話を追う限り五分の一も終わっていないようなので、どこまで話が広がるのかと思ってしまうのですが。

エナガ そこは期待して頂ければ。いつ頃になるかはまだはっきりと言えませんが、ちゃんと終わらせていきますのでよろしくお願いします。