漫画家を目指す大学生のヒントになればと、これまで60名以上の漫画家にインタビューを行ってきた東京マンガラボ。しかし漫画家志望者がプロ漫画家の話と同じくらい気になるのは一体何か?そう、デビュー前の作品を評価する編集者の声である。
そこでこの夏東京マンガラボは少年誌・青年誌・女性誌を担当する若手編集者をそれぞれお招きして新人作家をテーマとした座談会を開催し、その様子をコミックマーケット86で発行した冊子内で公開した。
さらに今回はその座談会を再編集し、漫画編集者志望の学生にも向けた内容を加えてウェブに公開する運びとなった。


A氏:男性。フリーランス。月刊少年誌の編集を担当したのち、現在はコミック誌の創刊準備中。

B氏:男性。講談社所属。『週刊モーニング』及び『月刊モーニング・ツー』の編集担当。

C氏:女性。編集プロダクション・シュークリーム所属。『FEEL YOUNG』『on BLUE』(ともに祥伝社発行)の編集担当。


読者から制作者になって

まずは自己紹介からお願いします。

A 講談社の新雑誌研究班という部署に所属しており、来年創刊予定の雑誌を企画しています。他には『マンガボックス』内の一部の作品の編集をしています。

B 『モーニング』と『モーニング・ツー』の編集部に所属して、いくつかの作品の担当をしています。

C シュークリームという編集プロダクションに所属して、祥伝社の『FEEL YOUNG』『on BLUE』の編集を主にしています。両誌で複数作品の担当をもっています。

月並みな質問ですが、漫画の編集者に就いた理由や経緯を教えて下さい。

A 僕はあまりクリエイティブなことが得意ではないので、ゼロから1を生み出すよりも1を5にするというか、「どうすればこの漫画が面白くなるのか」みたいなことを考えるほうが向いてると思ったんですよ。創作をやれと言われてできないことはないんですが、本当のクリエイターというのはなんでも言われる前にやってしまうような人達なので、言われてからやるよりは一つでも多くの創作に関わることができれば、と思って編集の道を選びました。

B 単純にフィクションを読むのが好きだったので、出版社に入りました。自分の場合は最初から漫画編集を志望していたわけではないんですが、入社して少し経ってからの配属決定の際に人事担当の方から「君はコンプレックスの強い人間だから、モーニングが合ってるんじゃないかな」みたいなことを言われて、今に至ります。今思えば全然わけのわからない理屈だったんですが(笑)、フィクション作品に触れられているので楽しいです。

C 逆に私は最初から漫画の編集者を志望していたのですが、新卒の時は漫画を扱う会社に受からず、旅行情報誌や教育雑誌を扱っている編集プロダクションに就職しました。その会社で3年の編集経験を積んだ後、どうしても漫画編集者への道を諦めきれずにシュークリームの中途採用に応募して採用されたんです。一番好きな雑誌が『FEEL YOUNG』だったので、本当に運が良かったと思っています。

実際に編集者になって感じたことは何でしょう?

A 変なところに足を踏み入れてしまったぞ、ということですね。というのもある時、特にすることがなかったのでその辺のソファでボーッとしてたら上司に叩き起こされたことがあったんです。何か怒られるのかと思ったら「何サボってんだ!暇ならちゃんと漫画読め!」って(笑)。

C 私は最初の頃、作家さんのネームに意見をすることに恐縮しきりでした。だって、少し前までただの読者だったのに(笑)。自分の意見を確かなものにしていくために、たくさん漫画を読んでおくことも仕事のうちなんですよね。

B 僕も『働きマン』などを読んで「めっちゃ怖い仕事やん、大丈夫かな」みたいな感じで怯えてましたね(笑)。でも実際に何をしているのかという具体的なイメージはなくて、入ってから思ったのは打ち合わせと同じくらい事務作業が多いな、ということですかね。

編集者になってから、漫画の読み方は変わりましたか?

A 夢中になって読めなくなりましたね。これは映画でもアニメでも同じで、セリフや表現を分析しながら見ることが増えました。逆に言うと、それをさせてくれないような作品が本当に面白い作品なのかな、と思います。

C 「今後お仕事をご一緒するかもしれない」と思う作家さんの作品は、自分が担当するならどんな提案をするか考えながら読んだりします。でも、圧倒的に面白い漫画を前にすると、寝食を忘れて読み進めてしまう一読者のままです。夢中になって読める作品はわりとたくさんあります。

B 夢中になって読めるということは、逆に言うと「自分が編集だったら、担当している作家さんからこのネームが出てきても何も言うことはない」ということだと思うんですよ。編集者になる前と比べると、読んでいてスルーできずに気になってしまうことが増えたとは思います。漫画を楽しめなくなったわけではなく、考えながら読むことで、新しい面白さに気づけるようになったという感じです。

編集者に必要な能力とは何でしょう?

A ひとつ明確な欲望を持つこと、だと思います。そしてそれを人前にちゃんとさらけ出せること。自分の求めるものや好きな物に対して責任が持てる人は、編集者としてだけでなく人としても信頼が置けますよね。

C コミュニケーション能力でしょうか。特に、作家さん一人ひとりに対して誠実な対応ができること。同時並行で担当している作家さんが何人いても、それぞれの作家さんに対応するときはその方に全力を注ぎます。担当している作家さん全員に「この人は私のことをすごく考えている」と思ってもらいたいので。

B 作家さんと同じように、当然編集者もみんな好きな物や得意な事がそれぞれ違いますよね。打ち合わせの中で作家が思いつかなかったことをズバズバ言って作品を面白くしていく人はもちろんいますし、例えばキャッチコピーを考えるのが上手い人や事務能力が優れている人、広い人脈を持ってメディア展開をさせて作品を大きくしていくような人もいます。各自の得意な仕事で貢献しながら、不得意な仕事であっても真剣に取り組むという
ことが重要ではないでしょうか。


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