ネームから清書までの具体的な流れをおしえてください

イシデ4コマは最初からざっくり4コマに割り振って考えます。ざっくりなので4コマ半とか5コマとかになったりもしますが、気にせずに11本。『土曜ランチ!』はだいたい1話11本なので。13~14本作ってあとで2~3本分整理することもあります。この、整理して別紙に描き出したものがネームで、さらに原稿のラフも兼ねています。ストーリーの場合は、B5の紙をタテに2分割して「見開き」に見立て、セリフや欲しい絵をざっと付箋に書いて貼って並べていきます。大きい絵がほしいページは付箋1枚だけ、込み入ったページでもなるべく5~7枚で収めるように、とかコマ割りをイメージしながら整理して配分を決めます。それから、一昨年くらいまでは、A4の紙を8分割して全体像が見えるようコマ割りしていくいわゆる「プチネーム」方式に入っていたのですが、その工程はまるまる省けるようになってきました。そのぶん事前の付箋の工程を念入りにします。B4の紙を横にして2分割にし「誌面」に見立てて、付箋の表を見ながらコマ割りして絵を入れていって、編集さんに見せるためのネームにします。あとは4コマもストーリーも同じで、ネームをトレス台で原稿に写しながら下絵を入れてペン入れして、クリップスタジオで仕上げ、という流れです。

どのような経緯でこの流れになったのでしょうか。また、イシデ電先生に合った方法を模索する上で、基軸になったことは何でしょうか。

イシデどんなやり方を選ぶ時も動機になるのは時間のなさと面倒くささです。これを基軸と言うのはあまりに情けないですが……。組み立ててはバラし、足しては削り移動させては戻しやっぱり捨てる…みたいな修正を何度も何度も重ねるので、同じようなことを描いたり消したりっていうのが、もう本当にめんどくさくて。付箋を使えば剥がして移動するだけで済むので、今はこのやり方でなんとなく落ち着いていますが、もっと手っ取り早そうなやり方を思いついたらこれからもどんどん変えていきます。まだ全然自分なりの方法っていうのが固まっていなくて、しょっちゅう「あれ?漫画のかきかた忘れたー!」ってじたばたしています。

何か資料を参考にして描くことはありますか?

イシデ見る資料も読む資料も使いますが、多い方ではないと思います。基本低予算漫画なので。ただ『土曜ランチ!』はけっこう使います。いくつも試作して工程を撮影して写真を資料にしますし、その前にレシピ本をごそっと買って読みます。毎月どんどん資料が増えていくので、あわよくば『逆流主婦ワイフ』で使いまわしたいと思っているところです。他には背景資料を外に撮りに行くこともありますし、漫画用資料集も使います。猫を描く時は骨格標本を参考にします。

デザイン性のあるページ構成で読者を引き込む漫画をお描きになっていますが、コマ割り、キャラクターや吹き出しや効果音の配置をどう考えていますか?

イシデまずは漫画としての基本的な読みやすさをいちばんに優先します。ななめ読みでもだいたい内容がつかめるように。その範囲内で、あんまり見たことがないような見せ方はないかな~と探しています。それが「デザイン性」に見えているのでしたら得した気分です(笑)。
画面の配置は、コマにしろ吹き出しにしろ構図にしろ、視点が一か所にとどまっている時間の長短の連続で面白いリズムができたら最高なんですが。うーん、どうでしょう。効果音の描き文字は、傾きや配置で効果線や視線誘導の補助もさせます。昔は「聞こえる音はすべてそのまま再現しなくちゃ!」とやっきになって描き分けていましたが、今は、ここぞという1か所か2か所だけ念入りに作ってあとは数パターンで回していると思います。

イシデ電先生のキャラクターは、どんな人格やデザインでも印象に残りますが、キャラクター1人(1匹)をどのように掘り下げていますか?

イシデ掘り下げられそうなところがあればどこからでも掘り下げます。生い立ちとかトラウマとかの重ためのところでも、「借りパクしちゃった本がある」とか「差し歯がある」とかどうでも良いところでも、後で何が使えるかわからないので。キャラとキャラとの関わり合いで生じる個性とか、場所やもので生じる個性とか……といった方向から考えることもあります。「おじいちゃんが女にだらしないことでおばあちゃんがやたらたくましくなっちゃってその影響を受けた孫の主人公も腕白に育っているけれど、女好きの芽はひそかに育っていてふとした瞬間に現れるその片鱗を思春期の姉は敏感に察知して母親はそれについてああだこうだ……」みたいに、複数のキャラを関連づけながらぐるぐる固めていったり。できれば、どんな脇キャラでもいざとなったら主人公になりうるくらいに作り込んでおきたいです。時間の許す限りになってしまっていますが。デザイン的には、性格を反映している造形であることに加えて、遺伝とか育った環境や生活スタイルを意識します。子供を描くことが多いのでお母さんの方針で見た目を考えることも多いです。「不器用なお母さんに髪を切ってもらっている」とか「双子におそろいの服を着せるのをよしとしない母親」とか。お父さんがらみでも考えないと不公平ですね。気を付けます。

キャラクターの心情が激しく揺れ動く作品が多くありますが、それを表現する際のポイントをおしえてください。

イシデ正直に、丁寧にかくこと、でしょうか。ポイントと言えるほどコツはつかめていないです。

漫画制作のこだわりがありましたらおしえてください。

イシデ一生懸命考えることです。みなさんされていることなのでこだわりと言えるかわかりませんが。

イシデ電先生の画風はどのようにして確立したのでしょうか。

イシデえっ、確立…していませんよ。そう見えますか?手癖が強く出ちゃっているのかな。いつも迷いの中で描いています。画材も使いこなせている気がしないし。正直絵を描くのは苦手です。せめて、何が描いてあるのかわかるようにだけはしようとしていますけど。画風は、ネームがちゃんと読者に伝わるならどんなのでもいいです。今からまるっきり変わっちゃって再来週また変わっちゃってもいいくらい。そんな技術ありませんけど。より伝わるなら誰か他の人に描いてもらうのもありって思っています。