恐竜のような生き物「リンドバーグ」が、飛行機のような羽根を背に付け大空を舞う……ゲッサンにて創刊号より連載を開始した『リンドバーグ』は、その驚きの設定と、冒険・成長・未知の世界といったド直球なファンタジー要素を取り込み、「新しくもどこか懐かしい」雰囲気を漂わせる作品です。物語はクライマックスに向けて一直線に突き進み、つい3日前の12日、最終第8巻が刊行されました。我々は連載終了直後に作者アントンシク先生を直撃、改めて約4年間に渡る連載を振り返って頂きました!

1章:恐竜が飛行機のように空を飛ぶ!奇抜な設定の意外な着想元
2章:和名のリンドバーグ!?世界観はどこまで広がっていたのか
3章:彼らの冒険はまだまだ続く!!最終8巻について
4章:率直に振り返る反省点と今後について


恐竜が飛行機のように空を飛ぶ!奇抜な設定の意外な着想元

『リンドバーグ』という作品で、1番最初に浮かんだアイディアはどのようなものでしたか?

アントンシク先生(以下アントンシク)中学高校時代は漫画家になるつもりなんてまるでなかったんですけど、自分の考えた設定や何かの構想、とっかかりみたいなものをノートに描きだすのが好きだったんですよ。それで、前の連載である『ガゴゼ』が終わって「さて次何しよう?」と考えていた時に、ふと思い立ってそのノートを見直してみました。そうしたら、その中に1枚、若者とおじいさん二人による飛行機モノみたいなイラストがあったんです。たぶん当時は、『バックトゥザフューチャー』のドクとマーティーの関係性みたいなのを頭に浮かべながら落書きしたんだと思います。それはイラストだけで、それ以外文章も何も書かれていなかったんですけど、それを見ていたら飛行機モノっていいかも、とふと思ったんです。

作品作りのきっかけは、1枚のイラストから始まったんですね。そんな作品の中でも一番目を引くのは、恐竜のような生き物「リンドバーグ」が、人工の羽根と合体して飛行機のように空を飛ぶという設定ですが、そのアイデアはどのように思いつかれたのですか?

アントンシク1番初めのイラストはいたって普通の複葉機でした。ただ自分の場合飛行機とか車とか、そういうカッチリしたものを描くのがすごく苦手なんですよ。逆に有機的なもの、自然物を描く方が好きなんです。飛行機モノを描こうと思ったものの、肝心の飛行機をそのまま描くのは面倒くさいなと(笑) それなら自分が描きやすい、生き物と組み合わせちゃえばいいんじゃないかと思ったんです。

作画による制約からあの設定が出来たというのは面白いですね!また、カバー裏のラフを見たところ、最初リンドバーグは恐竜ではないような姿だったようなのですが。

アントンシク最初は主人公のパートナーとなるプラモのデザインを考えていて、犬みたいな感じで描いていました。ところが、「犬が翼をつけて空を飛ぶって必然性がまったくないなー」とどうもしっくりこなかったんです。うーんどうしようと行き詰まっていた時に、そういえば竜やドラゴンなら空を飛ぶというイメージとぴったり合うな、と思いついたんです。

ドラゴンという架空の生き物から、恐竜という現実にいた生き物へとシフトしていったのはどうしてですか?

アントンシク竜やドラゴンって首が長くて頭が小さいイメージがあるじゃないですか。それが複葉機のガッチリとした機体とは合わないんじゃないかというのが気になりまして……首が短くてずんぐりむっくりしたヤツで考えていたら、自然と恐竜のような姿になり、第1巻辺りのリンドバーグはそういうタイプで出していきました。ただ描いているうちに、首が長くてもいいんじゃないかと思ってきて、途中から出し始めた感じです。それがキリオのロンドリィとか、ティルダ姫が乗っていたヴェガとかですね。

描いているうちに、当初想定していた設定が変わっていったのですね。

アントンシクリンドバーグの形状は特に変わっていきましたね。キリオのリンドバーグも、複葉機にこだわらずやり方に自由度が出てきた頃に生まれました。最初は複葉機という設定にこだわるあまり、アイディアが堅くなってしまってあまりしっくりきてなかったんです。
他にも、同じリンドバーグでも見た目やバランスがしっくりこなくて細かいマイナーチェンジを繰り返しました。最初と最後で、同じリンドバーグでも大きさとかがちょっとずつ違ってきてたりします(笑)

作中では小型のリンドバーグだけでなく、戦艦型や飛行船型など、様々なタイプのリンドバークが登場します。

アントンシクデカいものが空を飛ぶというのをやりたいというのと、ビジュアル的にインパクトのあるものをと考えたとき、大きい船やエルドゥラのようなリンドバーグがあった方が良いだろうなと思って出していきました。自分はFF(ファイナルファンタジー)世代でもあって、飛空船みたいなのにも憧れがあるので、艦隊戦を描いてみたいという気持ちもありましたね。海と比べて、空に浮いている飛行機の上で横付けして乗り込むのって相当危険だとは思うのですが……

その点、登場人物のシャークが飛行機の上を飛び移りながら戦うシーンがありましたよね。あれはハッタリの効いた演出でとても好きです(笑)

アントンシク現実的には絶対にあり得ないんですけど、漫画ではそういうハッタリが大事ですよね。実写やアニメの映像で、実際にぴょんぴょん飛び移る動きを映してしまうと、ちょっと拍子抜けしたり嘘臭くてしらけるところがあるじゃないですか。逆に漫画だとコマ割りによって、飛び移る瞬間を省略できてしまうので、なんとかそれっぽく見せることができます。

ニットの冒険の始まりの地である空飛ぶ島のようなリンドバーグ「エルドゥラ」は、別名のひとつに「ラピュータ」があったりもしましたが、どのようにイメージを膨らませていったのでしょうか?

アントンシク最初は物語の始まる場所として、とにかく隔絶された世界というのを頭に描いていました。そこで、登るのが不可能な山の谷間に村があり、空を飛ばないとそこから逃げられないみたいな舞台を考えていました。ただそれだといまいちインパクトがないなと感じたので、それなら実は空の上だったという方が良いんじゃないかということで、エルドゥラのアイディアを固めていきました。

ニットの心が、そのままプラモに直接反映するという設定はどのようなお考えで?

アントンシク『リンドバーグ』というお話を作り始めたとき、人間とリンドバーグが合わさって1つの存在であるという風に、どうしても描きたかったんです。リンドバーグ単体でも飛べないし、人がリンドバーグを制御しないと飛べない。どちらかが独立して空を飛べるようになったら、関係性が対等じゃなくなるなと思っていました。その関係性を、ニットとプラモは更に純化させたものとして、より心の結びつきが強い存在として描きたく、あのような設定が生まれました。