みくは補助輪がきらい。

幼稚園のおともだちは
みんな、みくが補助輪なしで自転車に乗れないことをばかにするから。

ついでに言うと、パパもきらい。

お仕事ばっかりでみくにかまってくれないから。

「自転車乗れるようになったら、パパと一緒に少し遠くへ遊びに行こうな。」
って言ってたけど、
きっとお仕事があるからって、どうせ行けなくなるんだ。

それなら補助輪なしで乗れなくても
今のままでいいや。

今日も幼稚園でばかにされた。

でも補助輪がなくちゃ怖いんだもん。

泣いておうちに帰ってきたら
ママが「どうしたの?」と聞いた。

けんたくんとさとしくんが悪いんだって事を
涙声で一生懸命ママに言った。

ママは

「2人も言い方が悪いわね。
でも、じゃあそれを見返してやろうと思わない?
みく、自転車の練習頑張ってみようよ。」

と言った。

でもやっぱり怖いから、
口をとんがらせてうつむいていた。

「じゃあ分かった!
みくは自転車乗れるまで、おやつなしね!」

ママが焼くクッキーはすごくおいしくてだいすき。
幼稚園のおともだちに言われた言葉より何より、
それがショックだった。

「なんで!なんで!」

とだだをこねたけど、
ママは「だめ」としか言ってくれなかった。

パパが帰ってきた。

「ん?どうしたんだみく。」

みくはふてくされて、ママの後ろに隠れた。
ママがけんたくんとさとしくんのことをパパに説明した。

「ふむ…。よし!みく!これから特訓だ!
パパ、これからは出張も少なくなるし、
土日なら練習付き合ってやれる!」

「…ほんとうに?」

「本当だよ!
この敏腕コーチがついてれば今週、来週の土日で
もうみくは補助輪なんていらなくなってるぞ!」

「びんわん?」

「スーパーコーチってことだ。」

「わかった…。」

ぐいっと涙をふいた。

落ち込んで、ふてくされたふりしてるけど
実はちょっぴり、パパとお休みの日を過ごせるのは楽しみ。

ついに土曜日がやってきた。

補助輪付きの自転車で、お家の近くの広い公園にパパとやってきた。
パパと過ごすお休みの日は久しぶりだな。

パパが補助輪をはずしてくれた。

「パパが後ろ持ってるから、いつもみたいに漕いでみな。」

「ぜったいだよ!ぜったい持っててね!」

「分かった分かった。」

前を見て、漕ぎだした。
後ろを持っててもらってるとはいえ、みく漕げるじゃん。

少しふらふらするけど。

「一回ストップしようか。
みく漕げるじゃん!次はパパ持たないでおくから、一人で漕いでみな。」

「えー、むりだよ!まだできないよ!」

「とりあえずやってみよう!ほら乗る!」

がんばったけど、5mくらい漕いで転んじゃった。
ひざをすりむいちゃった。いたいよ。

いたくて涙がでてくる。

「パパ知ってるぞ。みくは強い子。
泣かないで、もう一回チャレンジしてみよう?」

みくは大きくうなずいた。

それから日曜日も、その次の土曜日も、
お昼から夕方までたくさん練習した。

パパが後ろ持ってるって言ったのに、
途中から実は持ってなかったりもした。
持ってるって言ったのにさ。

特訓4日目の日曜日。

ひじもひざもすり傷だらけだけど、
もう今日で乗れるような気がするの。

ううん。ぜったい乗ってやるんだ。

「よし、ではみくさん。
今日も始めましょうかね!」

「はい!」

パパと二人でおまわりさんのポーズをした。
敬礼っていうのかな?

その日も最初はふらふらしてた。
でも一番最初の頃よりかは乗っていられる距離がすごく伸びてた。

太陽が沈もうとしてた。

足を止めたら自転車は止まってしまう。
怖くても次を漕ぐ。
コツをつかんだ気がする。
もう次は乗れる!

足はずっと動かした。
ハンドルをしっかり握って、変な方向へ行かないように。

顔に当たる風が気持ちよかった。

やっと乗れた!

広場を一周して、パパの元へ帰ってきた。

「パパ!乗れたよ!もうみく乗れるよ!」

「うん、すごい上手だったぞ。
すいすい乗れてた。よく頑張ったな。」

TMLSS(自転車)

パパは笑顔でみくの頭をなでた。
パパに頭をなでられるのも久しぶりだな。

照れくさかったけど、とっても嬉しかった。

パパも嬉しそうに、携帯電話でママに報告してた。

だいすきなパパとのお休みの日をくれたし、
だいきらいだった補助輪も悪くないかなと思った。

「あ、パパ約束守ってね!
補助輪なしで走れるようになったら、
自転車で少し遠くまでお出かけして遊ぶんだよ!」

「ちゃんと覚えてるよ。
来週、ママも一緒に出かけような。
さ、ママがおいしいご飯作って待ってくれてる。帰ろう。」

うん、でもやっぱり補助輪はいらないや!

ママの待ってるお家へ、
パパと一緒に補助輪なしの自転車で帰った。

 


制作:東京マンガラボSS制作チーム

担当:ちゃおこ/めもこ


 


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